マイボートを所有されている方にはよく知られている話なのですが、船は海に浮かべたままにしていると、船底にフジツボやカキなどの海洋生物が付着します。
これが付着すると走行時に水の抵抗になるため、速度が出ないとか、燃費が悪くなるなどの弊害が生じます。
今回は、このフジツボなどの付着を防ぐための「船底シート」を設置しました。
船底シートとは
船底シートはいわゆるフジツボなどの海洋生物が船底に付着繁殖するのを防ぐために設置するシートで、構造的には船の底全体をシートで覆うように設置されます。
船の底全体をシートで包むことで、船底周りの水とシートの外の水の循環を完全に遮断します。
それにより船底に付着しようとしているフジツボなどの幼生への酸素供給をシャットアウトし、付着する前に窒息死滅させようというのが船底シートの目的です。
この船底シートですがかなりの効果があるようで、きちんと設置すると1年経ってもフジツボはほとんど付かないそうです。
逆にシートがなければ、1年後には船底はフジツボだらけで、それを除去するのはかなりハードな作業になるそうです。
そんな話を聞くと、是が非でも設置しないわけにはいきません。
そこで取れる方法は二つあります。
一つは、市販の船底シートを購入し設置することです。
最も有名なのは、「広谷商店」さんの船底シートです。
長年の経験に培われた既製品ならではの品質や性能がウリで、一度設置すると5年から7年はノーメンテで大丈夫とのことです。
船底シートにより船の底にフジツボは付かなくなりますが、その代わりに船底シートの外側にはフジツボが付着します。
その付着したフジツボもいずれは自重により自然にシートからはがれて落ちてくれるそうです。
そう聞くと非常に良さげな既製品の船底シートですが、その分お値段がかなり張ります。
私の23フィートクラスのボート用のものは大体15万円くらいします。
5年もつとすると年間約3万円(月2500円程度)、7年もつとしても年間約2万円(月1500円程度)となります。
できるだけ出費を抑えたい安月給サラリーマンにはかなりきつい金額です。
そこでもう一つの方法として挙がってくるのが、「自作する」という方法です。
こちらは塩ビパイプとブルーシートを使って作るもので、材料費として1万円ほどあれば作ることが可能です。
ただし、市販品のようにシートに付着したフジツボが自重で勝手に落ちてくれる機能はないため(ブルーシートからははがれにくいらしい)、そのうちフジツボの重さによって船底シート自体が沈んでしまうとのこと。
なので、年に1回はシートを引き上げて、ブルーシートを新品のものに交換しないといけないそうです。
それでもシート代としては3000~4000円ほどですので、年間の維持費用は市販品に比べ格段に安くなります。
ということで、私の場合は費用を安くあげるために、自作することにしました。
自作は大失敗
さて自作すると決まれば、材料の買い出しです。
ブルーシート(7.2m×9m)と塩ビパイプを複数本と、シートを塩ビパイプに固定するためのインシュロックを買ってきました。
材料費はおよそ1万円ほどでした。
ブルーシートは半分に切って使うので、2回分に相当します。
なので、実質は7000円ほどになると思います。
(翌年以降は塩ビパイプは再利用するので、必要なのはシート代約3000円のみとなり、かなり経済的です)
お手本にするのは、いつもボートに乗せてもらっているK船長さんの船底シートです。
構造としては、塩ビパイプを船の形になるように組み合わせて接着し、両端はフタをすることで、塩ビパイプが浮きの役割をすることになります。
そこにブルーシートを巻き付けてインシュロックで固定すれば完成です。
構造自体は非常にシンプルなので、これをそのままそっくり真似して製作しました。
接着剤の硬化時間などを考慮しても、組み立て自体は嫁さんと二人で2時間もあれば完成しました。
ちなみに大きさは船の大きさとほぼ同じ、幅約3.5m×長さ約7mとかなり大きいです。
これをいよいよ海へ入れて、船の下へ潜らせるように滑り込ませていきます。
が!
ここからが大問題でした。
幅約3.5m×長さ約7mもある骨組み(塩ビパイプを接着組み立てしただけなので、強度がほとんどない)を二人で持ち上げて、船の下へ押し込んでいくのですが、桟橋とか船を繋ぎ止めているロープなどが邪魔して思ったようにうまく入っていってくれません。
二人で四苦八苦しながらシートを海に入れていきますが、自然と塩ビパイプにはネジレや曲げの負荷がかかっています。
そして、ようやく半分くらい押し込んだところで、あることに気づきました。
なんだか塩ビパイプの関節が変な方向に曲がってない?
塩ビパイプの接合部で「くの字」になっているところ(下の写真の部分)が、変な角度に曲がっています。(この写真はK船長の船底シートです。私のやつはあたふたしてて撮ってませんでした。)
実際にそこを触ってみると、完全に接着が外れてしまって、ぐにゃぐにゃになってます。
仕方なく、いったん陸上に引き上げて再度接着しなおすことにしました。
が、これがまた一苦労で、一度水に入ったブルーシートが今度はなかなか水から上がってきてくれません。
二人でヒイヒイ言いながら、なんとか引き上げたものの、今度は先端の「くの字」のところの接着も外れてぐにゃぐにゃになっています。
ガッカリしながら「くの字」部分のインシュロックを切って塩ビパイプを露出させ再接着しようとしましたが、接着が外れたせいでどうやら塩ビパイプの中に水が入ってしまっている様子です。
中に水が入ってしまうと塩ビパイプの浮きとしての機能が低下するので、きちんと排出させなければなりません。
なんとか水を出して、接着面が乾いたところで再接着をしました。
完全に乾いた頃合いを見計らって、ブルーシートを再度インシュロックで固定します。
そして再び嫁さんと二人で船底シートを船の下に入れる作業を開始しました。
もうこの時点で体力的にも精神的にもかなりキツイ状態になっています。
今度は失敗しないように、少しずつ少しずつ入れていきます。
が、やはりなかなかうまく入っていってくれません。
どうしても塩ビパイプには変な角度で力がかかってしまいます。
そして格闘すること30分ほど経ったころ、
あれ?くの字のところ、なんか変じゃない?
触ってみると、またもや接着が外れてぐにゃぐにゃになっています。
と、ここで完全に私の心はポッキリと折れました。塩ビパイプとともに。
もはや、もう一度引き上げて再接着する気力なんてこれっぽっちもありません。
仮に次うまくいったとしても、1年後にまた同じことをやるのかと思うとゾッとします。
ということで、しばらく放心状態で休憩した後に、泣く泣く塩ビパイプからブルーシートを外し、パイプをすべてバラして車に積み込み、何度も深いため息をつきながら帰宅しました。
嫁さんは横でずっとケラケラ笑ってましたが。(なんでやねん)
かくして、自作船底シート作戦は1万円ほどムダ金を使っただけの大失敗に終わったのでした。
市販品を購入
自作は失敗に終わりましたが、船底シートの設置そのものをあきらめるわけにはいきません。
フジツボの付着はなんとしても防がねばなりません。
となると残る手は一つしかありません。
市販品の購入です。
お高いのはわかっていますが、とりあえずまずは見積を取ってみることにしました。
すると、出張設置費用を含めて13万8千円とのこと。
かなり痛い出費ですが、仕方ありません。
これで5年~7年ノーメンテで、あんなに辛い思いをしなくて済むなら、むしろ安い買い物なのでは?と自分に言い聞かせて、発注しました。
納期は受注生産なので2週間ほどかかるとのことでした。
あっという間に設置完了
そして2週間が過ぎ、いよいよ設置してもらう日がやってきました。
広谷商店の方が2名でやって来られました。
担当の方によると設置は30分ほどで終わるそうです。
さっそく作業が始まりました。
材料は折りたたまれたシートと浮体となる発泡スチロールのブロックです。
このブロックをシート両側の収納スペースへ入れていきます。
ブロックの収納スペースはチャックで閉まるようになっており、非常に手際よく組み立てが進んでいきます。
だんだんと形が見えてきました。
組み立てながら少しずつ水に入っていきます。
それにしてもきちゃない水ですね。
ここで、この写真↓を見てほしいのですが、この船底シートは浮体部分がある程度柔軟に曲がることができるのですが、私が自作したものはそうはいきません。
この写真に近い状態になった際に、「くの字」の部分が折れてしまったんですが、そりゃそうなるわなって感じです。
そしてシートがすべて水に入りました。
あとは船の下へ滑り込ませていくだけです。
そして、ついに船の下に入り込みました。
あとは船のお尻側のシートをオムツのようにまくり上げれば、シート内外の水が完全に遮断されることになります。
これで無事設置完了です。
ここまで本当に30分かかるかかからないかという短時間で作業が済みました。
すばらしい手際でした。
製品の見た目も非常に高品質で安心感があります。
これで毎年の船底シートやり替えが不要で、5~7年(うまくすれば10年?)は楽ができそうです。
数年後に向けて、次の船底シート代を貯金しておかないといけませんけどね。
まとめ
というわけで、予定外にかなりの出費とはなってしまった(さらに失敗により1万円を無駄した)ものの、結果的にはとても良い買い物ができたのではないかと思っています。
とにかく、毎年ブルーシートの交換をしなくてもよい(かつ塩ビパイプの骨折におびえなくてよい)という精神的な安心感は大きいですね。
さらに、この船底シートのメリットですが、両側のフロート(発泡スチロールブロック)の間隔が保持されるように、しっかりした骨組みが入っているのですが、それによりシート内に船を進入させやすくなっています。
(自作船底シートの場合、シートに付いたフジツボの重みでシートが下方向に引っ張られ、お尻側の間隔が狭くなってしまうとのことです)
また両側の船が風で寄ってしまって、いざ係留しようとしたときに自分の入るスペースが無い、なんてこともなくなる効果が期待できますし、帰港した際に自分の入るスペースの目印になってくれることも期待できそうです。
以上、自作品の大失敗というトラブルはあったものの、なんとか無事マイボートに船底シートが設置できたお話でした。
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