マイボートを購入してから4回目となる出航は、家族で近場へとキス釣りに行ってきました。
このキス釣り自体はそれなりに楽しかったのですが、その出がけと帰り道の両方で手痛い海の洗礼を受けてきましたので、今回はその話をしたいと思います。
痛いスタート
係留場所について出航の準備を始めますが、実はこの日は朝からあまりお腹の調子が良くなく、準備中もトイレに行きたかったのですが、係留場所から最寄りのトイレは車で少し走ったところにあるコンビニになります。
なので、早く出航して少し広いところに出たら、そこで船内のトイレを使おうと思って我慢することにしました。
それがまずこの日の失敗の始まりでした。
お腹が痛いなぁと思いつつ出航しますが、早く広いところに出たい一心で、注意しなければならない大事なことを完全に忘れてしまっていました。
私の係留場所から広いところに出るまでには、水深が浅く狭い通路を通らなければなりません。
その際、できるだけ通路の真ん中の水深が深いところを通る必要があるのですが、頭の中はウンコのことでいっぱいだったので、うっかり浅場の方に船を進めてしまいました。
その瞬間、ゴゴンッ!
とすごい衝撃が船を襲いました。
どうやらプロペラが浅場に沈んでいる岩にヒットしてしまったようです。
すぐにエンジンを止め、船外機をチルトアップさせてプロペラを見てみると、3枚ある羽根のうちの1枚の先が少し削れているように見えます。
あちゃ~、やってしまった!と思いつつも、大きく変形しているようではないので、すぐに船外機を下してエンジンをかけ、浅場を離れて広いところまで移動しました。
そのまま引き返すかどうしようか少し悩みましたが、とりあえずその前に緊急ウンコです。
マイボートのトイレでの初ウンコを済ませてスッキリしたところで、改めてプロペラの確認をします。
先っちょが少し傷ついてはいるものの、見る限りは大きな変形もしていないようですし、エンジン自体も問題なく動いています。
少し走ってみて、もし振動が出たり異常を感じるようならそのまま修理してもらえるマリーナまで行こうと思いましたが、いつものように4000回転20ノットまで出してみても特に問題はなさそうです。
なので、今回はそのまま釣りに行くことにしました。
キス釣りはボチボチ
さて、その釣りですが、先日は家族で家島諸島までキス釣りに行ったものの、ベラばかりが釣れてあまり面白くなかったので、今回は島までは行かずに比較的近場でキス釣りをしてみることにしました。
係留場所からの移動距離自体は家島諸島へ行くよりは少し近い程度で、少し距離は走りますが、いつもは車で走る海岸沿いを海側から見るという、普段見ることのない景色が見れるのが楽しかったです。
これはマイボートがあるからこそ体験できることで、マイボートの醍醐味の一つかもしれません。
そしてポイントに到着ですが、ここは以前に貸しボートでキス釣りをしたことがあるポイントです。

ここでの釣りは、マイボートを手に入れたらどうしてもやってみたかったのですが、今回ついにその念願が叶いました。
そして今回初めてやってみたのが、アンカリングです。
水深は3~4mと浅いので、練習にはちょうど良さそうです。
アンカーを下して10mほどロープを出せば、簡単に船を固定することができました。
風はそよそよと吹いている程度ですが、念のためGPSプロッターで走錨(錨を引きずって船が流されること)していないことを確認したら、早速釣り開始です。
釣り自体は石ゴカイをエサにしたチョイ投げです。
家族3人それぞれが竿をもって釣りをしますが、嫁さんはゴカイが触れないので、私か息子がエサを付けてあげなければなりません。(チョット面倒)
最初に私が15cmくらいのキスを釣り上げ、続いて嫁さんもキスを釣りますが、例のごとく息子にはなかなかアタリがありません。
またいつものように息子がスネてしまうのかと思いきや、今回は根気よく頑張っています。
そうしているうちに、ようやく息子にもキスが来てくれました。
18cmくらいある、まあまあサイズのキスです。
これで気分を良くしたのか、そこからもフグを釣ったりイトヒキハゼを釣ったりしながら、3人で少しずつキスを追加していきました。
私の方にも途中かなり強いアタリがあり、上がってきたのはなかなか良型のキスでした。
測ってみると、24cmくらいありました。
結局この日は数自体はあまり釣れなかったものの、最終的に15匹をゲットし、エサがなくなったところで納竿となりました。
左下あたりの10cmほどのピンギスたちはできればリリースしたかったのですが、針を飲んでしまったのでやむなく持ち帰りとしました。
エンジントラブル発生!
さて、出だしはプロペラをぶつけたりと少々ショックなこともありましたが、釣りも楽しめたということで意気揚々と帰港すべく船を走らせて係留場所へと向かいます。
天気は良いし、波もないので、快調に船を飛ばします。
そして、係留場所まであともう少しという湾内の半ばあたりまで来たときのことです。
突然、
ピーーーーーーーーーーーーーー!!!
と、大音響で警告音が計器から鳴り響き始めました。
何事!?と思って見てみると、計器には「OVERHEAT」の文字が表示されています。
えっ!オーバーヒート!?なんで???
慌ててエンジンの方を見ると、冷却水が循環されている証拠であるパイロットウォーターがまったく排出されていません。
しかもエンジンカバーから白い湯気が上がっています。
ここでご存知ない方のために簡単に説明しますと、ボートの船外機は車のエンジンとは違って、海水を吸い上げてエンジン内に循環させて冷却しています。
その吸い上げた水の一部がエンジンからオシッコのように排出される仕組みになっているのですが、これをパイロットウォーターといい、これが出ていればエンジン内には冷却水が正しく循環している証拠になります。
つまり、このパイロットウォーターが出ていないということは、なんらかの原因により冷却水が吸い上げられておらず、エンジンは冷却されないために過熱、つまりオーバーヒートしてしまうということになります。
冷却水が吸い上げられなくなる原因としてよくあるのが、海中にあるビニールゴミなどが冷却水取入れ口に吸い付いてしまうトラブルです。
通常、原因としてまずパッと思いつくのはそれなので、エンジンをチルトアップして冷却水取入れ口をチェックしてみました。
が、特に何もゴミなどは付いていません。
エンジンを止めたことで張り付いていたゴミが取れたのであれば、エンジンを再始動すればパイロットウォーターは出るはずです。
そう思いエンジンを始動してみますが、やはり水は出てきません。
そうなると次に考えられるのは、水を吸い上げるためのポンプ(特にポンプ内にあるインペラという水車のような部品)の破損です。
もしこれが破損していれば、もはやお手上げです。
海上で私にできることは何もありません。
軽くパニックになりつつも、どうすればよいかを思案しますが、考えている間にも船は風に流されてどんどん移動していきます。
素人がいくら考えていても仕方がないので、プロに意見を聞くべくマリーナに電話することにしました。
マリーナの方曰く、やはりまず疑われたのは取水口のゴミの付着ですが、それはもう確認済みです。
あとはパイロットウォーターの出口がゴミで詰まってないか聞かれましたが、こちらは棒状のもので突っついてみても特に何かが詰まっている様子はありません。
そうなるとやはり考えられるのはインペラの破損ですが、これは納艇される直前に新品に交換したとのことで普通は考えにくいと。
あとは、出がけにプロペラをぶつけたことが何か関係しているのか?と聞いてみましたが、それはオーバーヒートとは直接関係ないだろうとのこと。
ともかく今はエンジンに対してできることは何もなさそうので、まずは風任せに船が漂流している状態をなんとかしないといけません。
このままだと他の船舶の航行の妨げになったり、あるいはどこかの岸壁にぶつかったりしてしまうかもしれません。
エンジン自体はかかることはかかるので、エンジンを過熱させないようにアイドリング状態でギアを入れ、ゆっくり移動してどこか係留できるところまで行くことにしました。
幸いなことに、すぐ近くに大き目のボートパークがあるので、まずはそこを目指し、空いているスペースに係留させてもらうことにしました。
エンジンが焼き付かないことを祈りながら、アイドリングでじわじわと船を進めていきます。
移動速度は歩くよりも遅いかもしれません。
息子はというと人の気も知らずに、
「まだ帰れへんのん~?なんでこんなにゆっくりなん~?はよ帰ってゲームしたい~」
などと呑気に文句を言っています。
こっちは、エンジンが焼き付いて死ぬのが先か、ボートパークに無事到着できるのが先かで、それどころやないっちゅうねん。
エンジン死んだら100万円コースやぞ?
そんな金もうどこからも出んぞ?
ホンマにエンジン死んだら、もう船を手放すしかないのか?
などと、良くない妄想が頭をよぎりまくります。
精神的なダメージを蓄積しつつ、かなりの時間をかけながら、ようやくボートパークの空きスペースに船を係留できたときには、心身共に疲労困憊でした。
マリーナに電話し、なんとか無事に係留できたことを伝え、翌日に曳航しに来てもらうことをお願いしました。
それから、タクシーを呼んで自分の係留場所まで移動し、車に荷物を積み込んで帰宅しましたが、精神的ダメージはかなり大きく、放心状態で釣ってきたキスを料理したあとは、キスをツマミにビールを飲んでそのままバッタリと寝てしまいました。
マリーナへ曳航
エンジンが再起不能になって絶望する夢にうなされた翌朝、眠い目をこすりながら船を仮に係留しているボートパークへ向かいます。
あまりにも気が重いですが、意識して「こんな経験はそうそうできない。これは勉強だ。」と自分に言い聞かせて気分を変えることにしました。
ボートパークについて、船に荷物を積み込んだりしていたらマリーナの船がやってきました。
挨拶して早速曳航の準備にかかります。
一旦船を左右に並べた状態でロープで固定し、広いところまで並走状態で移動したところで、私の船の船首とマリーナの船の後方をロープで結びます。
準備ができたら曳航開始です。
曳航される速度は大体6ノット(時速11kmくらい)で、非常にゆっくりです。
マリーナまで約10kmほどの距離を移動するので、およそ1時間の旅です。
マリーナの方からは「のんびりしといてくださいね」と言って頂きましたが、なんだか申し訳ないです。
とはいっても、本当にやることがないので、船内の掃除でもしておくかと、水を汲んでは船内をゴシゴシして過ごしました。
そしておよそ1時間後、ようやくマリーナに到着し、マイボートが陸揚げされました。
船底塗装が一部薄くなっているところがありますが、見る限りではフジツボなどの付着はなさそうです。
船底シートを設置してから1か月ほど経ちますが、ちゃんと役に立っているのだと思われます。
オーバーヒートの原因は?
さて、陸揚げされたら早速原因調査の開始です。
まずは船外機のロアーユニットをごっそり外します。
こちらが下したロアーユニットです。
シャフトの下部にウォーターポンプがあります。
このポンプのケース内にインペラと呼ばれる水車のような部品が入っており、それがシャフトで回されることにより海水が吸い上げられます。
そして、このケースを外して出てきたのがこちらのインペラです。
見事に縦にパックリと割れています。
シャフトには突起があってインペラ内のキー溝にはまるようになっています。
それでシャフトとともにインペラが回るのですが、インペラが割れたことで内径が広がり、この突起がインペラ内のキー溝にかからず空回りしていたようです。
なぜこうなってしまったかはわかりませんが、おそらく取水口にゴミが付着したことでインペラが水を吸い上げられなくなり、それが大きな抵抗を引き起こし、その荷重に耐えられずに割れてしまったのではないかと思われます。
これが正しいかどうかはわかりませんが、原因はともかく、インペラを新品に交換し、ロアーケースをもとに戻しました。
これでちゃんと水が吸い上げられるようになったかをテストします。
取水口に水道のホースをセットして水を供給し、エンジンを始動します。
すると、ちゃんとパイロットウォーターが出ました!
エンジンからぴゅーっと水が出ているのがわかると思います。
とりあえずこれで、修理は完了です。
ところでプロペラは?
さて、エンジンの方は修理が完了しましたが、朝イチに浅瀬でヒットしたプロペラはというと、やはり先端が削れて少し変形もしていました。
ただ、マリーナの方の見立てでは特に影響のないレベルで、交換までの必要はないとのことでしたので、そのまま使うことにしました。
ただ、あまりにガリガリになっているので、ヤスリで少し滑らかに修正しときました。
真正面から見ると、やはり少し形が変わっちゃってますね。
右上の羽根がそうです。
先っちょが他の羽根に比べてすこし先がとんがった形になってしまいました。
無事帰港
一通りの修理が済んだら再び船を海に浮かべて帰港します。
船に乗り込んだらエンジンを始動し、パイロットウォーターが出ていることを確認したらギヤをバックに入れ、ゆっくりと桟橋を離れます。
そしてギヤを前進に入れ、少しずつ船を加速させます。
天気は非常に良く、波もないため、船は順調に滑るように加速していきます。
特にプロペラのダメージを感じさせるような振動や異常もなく、気持ちよく快走できます。
ただ、やはり気になるのはエンジンから排出されるパイロットウォーターです。
走行中ちゃんと水が出ているかどうかが気になって気になって仕方がなく、2~3分置きに後ろを振り返って水が出ているかを確認してました。(笑)
そして、前日に計器の警報が鳴った地点が近づいてくると、また警報が鳴るんじゃないかという気がしてヒヤヒヤしましたが、そんなこともなく無事にトラウマ地点を通過し、なんとか係留場所へとたどり着けました。
まとめ
というわけで、マイボート購入後4回目の出航にして、非常に盛りだくさんの経験をさせてもらいました。
今回のエンジントラブルは、風も弱く、かつ湾内で陸地に近いところで発生したため、大事には至りませんでしたが、これが風が強く波のある日に、沖のど真ん中で発生していたらと思うと、非常に恐ろしいです。
あたふたしているうちにどこまで流されるかわからないし、他の船舶と衝突してしまうかもしれません。
ちなみにプレジャーボートにも自動車でいうところのJAFのように、会員になっていれば無料で曳航してくれるBANというサービスがあります。
入会金10,000円に加えて、会費が年間18,000円(月1,500円相当)がかかりますが、これに加入していれば、いざという時には大変助かるのではないかと思います。
なので加入するかどうかを考え中ですが、今回の曳航代と修理代を支払ったので、正直なところお財布的にはかなり厳しいです。
でも入っておいた方が良いのは間違いないと思いますので、近々加入しようと思います。
大海原でなす術もなく漂流するのはもう御免ですからね。
以上、納艇早々に海の洗礼を受けてきたお話でした。
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